イラストに皮肉を込めて表現する
小田原愛美のルーツと新たな挑戦。

ART

ダークとユーモアをMIXさせた作品を生み出す、イラストレーターの小田原 愛美さん。さまざまなブランドにデザインを提供していることでも知られ、作品と同じテイストをデザインに落とし込んだユニセックスのアパレルブランド〈I&ME〉も手掛けて活躍中。そのスタイルは唯一無二の存在感を示し、アートワークやウェアはもとより人柄にも注目が集まっている。そこで改めて彼女のルーツや考え方を探り、過去から現在、そして少し先の未来までを覗いてみよう。

内面を映し出した作品には
皮肉が込められている

「子どもの頃から絵を描いていましたけど、それを仕事にしようとなんて考えずに生きてきました。勉強をしていなかったので高校を卒業する時に進路をどうしようか悩んで、結局グラフィックデザインの専門学校に入学。そこでも勉強をがんばることもなく、卒業してからフリーターをしていたんですけど、学生時代の友達に誘われて、いきなり個展を開催することになりました。やってみたら仕事を少しずつもらえるようになって、今に至ります」
そう話すように、愛美さんは意気込んでイラストレーターを志していた訳ではなく、自然体でいたことによって現在の活動に繋がった。そして、その気ままな性格は作品からもひしひしと感じられる。

「基本的に、昔から描いているモチーフは変わっていないけど、最近は少しだけ自分の色を出せているように感じています。皮肉が込められているところが私らしい。言葉じゃ説明しにくいけど、私の内面が出ていると思います」

自分なりに楽しみながらアウトプットする個性は、作品だけではなくI&MEにも反映されていると言う。
「I&MEは、メンズブランドを作っている父から、やってみたら? と言われたのをきっかけに2014AWからスタート。動機は軽いノリみたいなものですね。シーズン毎にテーマを設定していなくて、その時に描いているイラストからデザインを起こしています。だから、作品とブランドはリンクしていて、今の気分が反映されています」

愛美さんの描くイラストは柔らかくかわいらしいが、テーマや内容はグロテスクだったり卑猥だったりするものが多く、何かに媚びることはなくアイロニカルな視点を持つ。その下地にあるのはホラー映画。
「昔からホラーとかモンスターとかの映画が好きだったので、それが根底にあるのかもしれない。そういう映画って子どもの頃は怖かったけど、今になって改めて観てみると馬鹿ばかしくてウケますよね(笑)」

イラストだけではなく
立体作品にも挑戦中

愛美さんのスタイルは長年変わらないが、最近ではそれを落とし込む表現方法に少しだけ変化があるようだ。
「ジェームス・リジィーの作品が実家に飾ってあって、ずっと3Dのイラストを作ってみたいと思っていました。だから最近は立体的な絵を制作しています。切り貼りするのが好きなので、やっていて楽しいです。あと、今までは机の上で小さいモチーフばかり描いていましたが、大きいキャンバスに描こうと思っています」

さらに3Dになったのはイラストの作品だけではない。新しく挑戦していることがあると教えてくれた。
「これからは絵だけじゃなくて部屋に飾れる置物も作っていきたいと思っています。最近は粘土でブラックパンサーや金塊を作りました」
イラストから飛び出したかのようなオブジェは、愛美さんらしさをそのままに新たな一面を感じさせる新鮮な印象。作品の振り幅を広げたことで、彼女の今後の動きがますます楽しみになった。

初回からYES GOOD MARKETに参加しているが、今年の開催には一段と期待が高まっているとのこと。
「去年までの海に面した会場が気持ち良かったし、毎回来場者が多いから楽しいです。東京からだとちょっと遠いけど、参加すると翌年もまた来たくなっちゃう。今年は会場が変わってアートギャラリーが設置されるそうで、作品をきちんと展示できるのが楽しみ。野外イベントでちゃんとしたギャラリーがあるのって斬新だと思います」

PHOTO:DAIKI KATSUMATA TEXT:SHOGO KOMATSU