サーフカルチャーを背景に持つ
hi-dutchオリジナルの表現法。

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さまざまな手法を使った表現をするアーティストのhi-dutchさん。彼を代表する作品に、木材に毛糸を装飾し、樹脂でコーティングしたアートピースがある。木材の温かみと毛糸の優しさが調和して、樹脂で包み込むことで独特な風合いを醸す作品となり、唯一無二の輝きを放つ。その不思議な魅力を発する作品を制作するhi-dutchさんに迫るべく、地元に建てたというアトリエへお邪魔して話を聞いた。

さまざまな経験や活動を経て
アーティストとして本格始動

YOKOKAWA FOREST LABの友人とともに完成させたばかりだというタイニーハウスのようなアトリエ。ここで待っていたhi-dutchさんに、まずはアーティストとして活動しはじめた頃について早速話してもらった。

「小学生の頃から移動手段としてスケートボードに乗っていて、スケートカルチャーのグラフィックやTシャツのデザインに興味を持ったのがアートの原点ですね。地元にウォータースポットという老舗のサーフ&スケートショップがあったんですけど、そこで20歳くらいから働きはじめました。それと同時期に絵を描きはじめて、ショップのオリジナルTシャツをデザインしていて、それが最初のキャリアと言えます。それから絵を仕事にしたいと思うようになって、ウォータースポットを20代後半で退職しました」。

「でも、すぐに絵の仕事なんてないから、ウォータースポットで修得したサーフボードリペアの仕事と二足のわらじを履いていました。少しずつ絵やグラフィックのお仕事が増えていって、BEAMS TからTシャツをリリースしたのをきっかけに、NIKEやadidasとも繋がるようになって、そういった企業が主催するアートショーに携わったり、映像のディレクションをしたりしていました」。

すでに当時から現在の作風と同じアートピースを制作していたが、どちらかというとアーティストではなく別の方面で活躍していたというhi-dutchさん。そして、毎年横浜の赤レンガ倉庫で開催されているグリーンルームフェスティバルにも、初回からスタッフとして運営に携わっていた。
「第一回目の開催では、スペースシャワーTVで公開する映像を撮ったり、知り合いのミュージシャンをインタビューしたり、ありとあらゆる裏方のことをやっていて(笑)。世界中から作家を招致して作品を展示するアートウォールへの作品のインストールも僕が担当していました」。

そして、グリーンルームフェスティバルが2回目の開催となった2006年に転機が訪れた。
「ある海外アーティストが直前で来日キャンセルとなり、アートウォールが一ヶ所空いちゃいました。それで、僕がこういったアートを制作していることを主催者も知っていたので、『作品を展示してよ』と言ってくれて。作品を展示しつつ、前年と同様にインタビューをしたり、映像を撮ったりと裏方の仕事をしていました。結果的に取材に来ていたメディアが僕の作品もピックアップしてくれて、作品がひとり歩きした状態に(笑)。でも、それから作家としてのお仕事が増えていきました」。

サーフカルチャーに繋がる
独自の手法とメッセージ性

こうして作品が注目されるようになったが、この独創的なアートはどうやって生まれたのだろう?
「僕の作品は、木材に毛糸を貼って樹脂でコーディングをしていますが、その樹脂はサーフボードで使用するもの。サーフボードのリペアで培った技術を制作に活かしている訳です。はじめのころは、線画を描いた木の板に樹脂を重ねるだけだったんですよ。でも、素材の不一致を感じていて、もっと相応しいマテリアルを探していました。そしたら、たまたま毛糸が家にたくさんあるのを見てひらめきました。これを樹脂でコーディングしたらおもしろいかもしれない、と」。

「最初は線画に糸を這わせて、アウトラインだけに毛糸を使っていました。それを試行錯誤しながら実験を繰り返し、最終的には木材を毛糸で埋め尽くす現在のスタイルに。でも、リペアの仕事で樹脂の扱いには慣れていたとはいうものの、熟練の職人から見ると磨き方などが未熟だったみたいで。修行の意味を込めて、丸型とか雫型とか、誤魔化しが利かないシンプルな図形の作品を10年ほど作り続けました。やっと技術が伴ってきたので、今年2月に開催した個展からいろんなモチーフを使った作品を展示するようにしました」。

長い期間を経て披露された集大成ともいえる作品の中には、こんなメッセージが込められたものもある。
「10代後半から現在まで、最低でも週に1回は必ずサーフィンに行っているんですよ。海岸を見渡すと、昔は全然なかったのに今はビーチプラスチック(海洋漂流ごみ)だらけ。知り合いからビーチクリーンに誘われるんですけど、海から離れた場所に住んでいるので、そのタイミングに合わせて毎回参加するのも難しくて……。だから、海に行ったら絶対に、ひと握りだけでもゴミを拾うようにしています。大々的に人を集めたクリーン活動しているのではなく、海に入った帰り際、片手にサーフボード、片手にゴミを握るくらいの個人的な活動です。でも、それだけでかなりの量のビーチプラスチックが集まるんですよ。それを続けていくうちに、ゴミが作品になったらおもしろいんじゃないかって発想が生まれました。それで前回の個展で、ビーチプラスチックを食べちゃった海の生き物の作品を展示。こういった作品は、サーフライダーファウンデーションという海岸環境の保護団体に売上の10%を寄付して、少しでもビーチに還元できたらいいなと考えています」。

サーフィンをきっかけに
SEE SEEとリンクアップ

サーフカルチャーが糸口となり、作風が完成したり、作品にメッセージ性が込めたりしているhi-dutchさん。SEE SEEと繋がったきっかけもサーフィンが関連しているようだ。
「サンフランシスコで何回か会ったことがある、ジェフ・カンハムというサーフカルチャーに精通しているアーティストが浜松にあるGEEというお店のイベントに来るという情報を聞いて、花井(祐介)くんと一緒に、久しぶりに会いに行ったんですよ。そこにヒロくん(SEE SEEの湯本さん)がいて、はじめて直接あいさつをしました。もともとSEE SEEを知っていて、地元の伝統工芸を応用して現代的に落とし込むのがおもしろいと思っていました。僕もサーフボードのリペア技術を応用した作品を制作しているからシンパシーを感じて興味があったんですよね。それ以来仲良くさせてもらっていて、福岡での展示の時、SEE SEEのスプレー缶をモチーフにしたプロダクトをメインビジュアルとして使わせてもらいました」。

hi-dutchさんは、今年のYES GOOD MARKETがはじめての参加となるが、すでに期待値は高まっている様子。
「ヒロくんの世界観がユニークだし、YES GOOD MARKETは僕の考えと近いイベントなのかなと思います。今回のYES GOOD MARKETでは、作品展示のためにアートギャラリーを設営しているそうなので、参加できるのはうれしいですね。そこには僕の知り合いでもあるアーティストがたくさん参加しているし、他にもいろんなコンテンツがあるみたいなので、普通では味わえないマーケットだと思います。僕は東京を中心に活動しているので、そこでは出会えない人や、まだ接点がないアーティストの方と繋がれるのも楽しみにしています」。

PHOTO/DAIKI KATSUMATA TEXT/SHOGO KOMATSU