「バッグ以上のバッグ」に新たな価値を。FREITAGが重ねる50個のブルー。

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走り終えたトラックのタープを洗い、切り、バッグへ。1993年にスイス・チューリッヒで生まれた「FREITAG」は、アップサイクルという言葉が広く使われるよりずっと前から、捨てられるはずの素材に次の役割を与えてきた。けれど、その魅力は環境にいいだけではない。一点ごとに違う色や傷を持ち、直しながら使ううちに、持ち主だけの相棒になっていく。この秋、YES GOOD MARKET(以下、YGM)では、ブルー
の「FREITAG」に、ESPOが描いたキービジュアルをシルクスクリーンプリントした50点を販売する。そこで、日本のビジネスデベロップメントマネージャーの脇野さんに、ブランドの原点から循環の現在地、そして一点物にもうひとつの個性を重ねる今回の試みまでを聞いた。

FREITAG
1993年、スイス・チューリッヒでマーカス・フライターグとダニエル・フライターグの兄弟が設立。使用済みのトラックタープ、自動車のシートベルト、自転車のインナーチューブなどを再利用し、一点物のバッグやアクセサリーを生み出してきた。製品の修理やパーツ交換に加え、近年は単一素材で循環可能な「Mono[PA6]」など、アップサイクルの先を見据えたプロダクト開発にも取り組む。
https://www.instagram.com/freitagjapan/
https://www.instagram.com/freitaglab/

捨てられるものを、材料として見る。

ー改めて、FREITAGの魅力を教えてください。

昔は、よく「MORE THAN A BAG」と言っていたんですけど、僕ならまず「バッグ以上のバッグ」と伝えます。「FREITAG」は使用済みのトラックタープからつくられていて、全部が一点物。同じ青でも、どこを走っていたトラックなのか、どれくらい使われたのかで、日焼けや傷の入り方が違います。トラックとしての役目を終えた素材が、今度はバッグになって、持ち主といろいろな場所へ行く。そう考えると、ただの物より相棒に近い存在だと思うんです。

「FREITAG」の多くのモデル名は、創業者が好きな映画や海外ドラマ、
アニメのタイトルや登場人物から名付けられている。

ーそれぞれのバッグに名前が付いていることも、愛着につながっていますか?

そうですね。たとえば「F52 MIAMI VICE」なら、「俺のMIAMI VICEがさぁ〜」と呼ぶ、みたいな。単に「FREITAGのバッグが〜」と言うより、人や友達の名前を呼ぶ感覚に近いというか。物質的にはバッグですけど、使い続けることで物以上の存在になり得る。それは「FREITAG」らしい魅力だと思います。

ーそもそも、なぜトラックタープがバッグになったのでしょう。

創業者のマーカスとダニエルは、子どもの頃から捨てられたものを「ゴミ」ではなく「材料」として見ていたそうです。90年代前半、チューリッヒで自転車移動をしていた二人が、欲しいと思えるメッセンジャーバッグを探しても見つからなかった。それなら自分たちでつくろう、と。住んでいたアパートの近くを走るトラックを見て、廃車置き場へ行ったら、使い終えたタープが山積みになっていた。そこで、タープをバッグ本体に、車のシートベルトをストラップに、パンクした自転車のインナーチューブを縁取りに使ったのが始まりです。

ー最初から「サステナブルなブランド」を目指したわけではないんですね。

自分たちが使いたいものをつくった、というのが出発点。友人に「自分のもつくって」と言われて、余った素材でつくっていたら、「これ、売れるんじゃない?」となった。最初の販売も、ただ橋にバッグを並べて、友達を呼んで音楽をかけるイベントのようなローンチだったそうです。商売を始めるというより、遊びの延長だったんだと思います。

ーこの銀座店にもその考え方が表れている気がします。

ここは以前、老夫婦が営む靴屋さんだった建物です。「FREITAG」のバッグは、タープに残った傷や汚れまで含めて素材の表情として生かす。だから店も全部をきれいにつくり直すのではなく、残せる床やタイルはそのままに。危ないダメージは直しますが、歴史として残せるものは残す。その考え方はバッグと同じですね。

直して、使って、その先まで考える。

ーFREITAGでは、創業当時から修理を大切にしてきたそうですね。

壊れたから捨てる、新しいものに買い替える、ではなく、直して一緒にいられる時間を延ばす。つくった側には、その責任があると思っています。日本でも2008年から修理サービスを続けていて、渋谷店にはリペア工房があります。

ー傷や汚れは、どこまで直すべきなのでしょう。

そこは自分の感性でいいと思います。角が擦れたり、表面が剥げたりするのは、一緒にいた証でもありますから。神経質になりすぎない方が「FREITAG」は楽しめる。ただ、エイジングと単なる汚れは違います(笑)。人が見て不快に感じるくらいなら、きれいにした方がいいでしょう。水で硬く絞った布や、中性洗剤を使ってケアもできますよ。

ーその先に、単一素材でつくる「Mono[PA6]」も生まれました。

アップサイクルは、捨てられるものの価値を上げて、もう一度使う考え方です。でも、どれだけ長く使っても、最後はゴミになってしまう可能性がある。そこで今は「ゴミにならない方法」を考えています。Mono[PA6]は、生地だけではなく、ジッパー、バックル、糸、タグ、ストラップまで、すべてポリアミド6でできています。

ーなぜ、すべて同じ素材にするのでしょう。

回収したバッグをまとめて粉砕し、素材の元になるペレットへ戻せるからです。そこからまた生地をつくってもいいし、バックルやコードにしてもいい。異素材が混ざっていると、一つずつ分解しなければならないので。アルミ缶を回収して、またアルミとして使うのに近い考え方ですね。僕たちはバッグだけを売るのではなく、リサイクルの現場まで含めてものづくりを考えたい。自分たちのアイデンティティであるタープを使わない商品をつくってでも、「こういうものがつくれる」と見せる責任があると思っています。

ー一方では、トラックタープ自体を循環させる研究も進めているとか。

はい。研究機関やトラック関連の企業、タープメーカーなどと一緒に、役目を終えたら、もう一度タープに戻せる素材を開発しています。バッグになるのは、使い終えたトラックタープ全体のほんの一部です。「FREITAG」だけがバッグにするだけでは、根本的な解決にはならない。だから素材そのものを循環させるところまで考えたい。アップサイクルから、もう一歩先へ進もうとしているところです。

50通りの青に、白を重ねる。

ーYGMへの参加は、2023年の静岡以来、今回が2回目ですね。

そうですね。前回は新作の販売とキーホルダーをつくるワークショップをやりました。「FREITAG」は普段、店の中できちんと世界観をつくって販売することが多いので、当時は屋外イベントへの出店自体がほとんど初めてに近かった。テーブルを置いてバッグを並べればいい、というブランドではないので、どうすれば会場でも「FREITAGだ」と感じてもらえるか、かなり考えました。

ー今回は、青いバッグにESPOのYGMキービジュアルをシルクスクリーンプリントして販売されると伺っています。

もともと「FREITAG」には、タープそのものの柄や傷があります。そこへさらにプリントを重ねることで、もう一つ個性を加える。これって「FREITAG」との相性がすごくいいと思うんです。事前にテストして、水や熱への耐久性も確認していますが、とてもいい仕上がり。使っていくうちに少し擦れたりしても、それがまた味になっていくと思います。

ーなぜ「青」を選んだのでしょう。

実は、トラックタープには青が多いんです。企業のコーポレートカラーとして使われることも多いですし、清潔感や誠実さを感じさせる色でもある。「FREITAG」には、本当にいろいろな青があります。同じ青でも、明るさも濃さも、傷の入り方も全部違う。たぶん、世界で僕たち以上に青のバリエーションを選べるブランドは、なかなかないと思います(笑)。だから、その青に白いグラフィックを重ねるのは、すごくメイクセンスだと思っています。

ー50点とも、同じグラフィックなのに違う表情になりそうですね。

そうですね。柄の入り方が強いものなら、グラフィックとタープが混ざって見えるかもしれないし、シンプルな青なら白がくっきり見える。選ぶ楽しさはかなりあると思います。シリアルナンバーも入るので、自分だけのバッグという感覚は、より強くなるはずです。

ー最後に、手にした人にはどんなふうに使ってほしいですか?

日常的にガンガン使うのはもちろん、ESPOの作品として部屋に置いてもいいと思います。バッグによっては、花を入れてプランターカバーのように使っても面白いですし。用途はあえて限定しません。元のタープにすでに一つの歴史があって、そこに「FREITAG」のデザインが加わり、今回はさらにESPOのグラフィックが重なる。その先には、使う人の時間が重なっていく。そうやって、自分の相棒になっていったら一番いいですね。

Photo:Shinsaku Yasujima
Edit & Text:Jun Nakada