スプレーやペンキなどを駆使して唯一無二のスタイルを確立する神山隆二さん。海外の展覧会にも数多く参加し、その知名度は年を重ねるごとに世界へと響き渡る。国内外のブランドからコラボレーションのラブコールは絶えず、ギャラリー以外でも彼の作品を目にすることが増した。そんな神山さんは今年3月にスタジオを移転。新型コロナの影響にめげず、アーティストとしての感性をファンへと届けるため制作に励む。
展覧会の延期が相次ぐ中
作品の制作に変化が
目紛しいほどの活動を展開している神山さん。昨年はさまざまな展覧会での展示やコラボレーションを重ねてきた。今年も上半期が終わりに近づき、現在の活動や心境を尋ねてみる。
「新しい動きもあるけど、普段通りに制作を続けています。今年の前半は海外での展覧会がいくつも予定されていましたけど、ほとんどが延期になっちゃいまして……。僕らのようなアーティストも、観に来る人たちも、ギャラリーも、誰も経験したことない状況。でも、悲観的になっていても仕方がないから、この状況を前向きに楽しんでいます。クライアントワークも一旦止まっていましたが、ようやく再び動き始めました」
「とは言っても、家からスタジオに来て、描いて帰る、ってやっていること自体は変わっていませんけどね。ただ、コミュニケーションの制限があるのは寂しいですよね。日常の考え方を変えないことが大事かもしれない」
ほとんどの展覧会が延期となる中、アーティストとして制作のスタンスに若干の変化があったそうだ。
「いつでもすぐ動けるように、手を止めていられません。人と会う時間が減ったから、スタジオに一人っきりで篭れる時間が増えたので、以前だったらここで止めていた手を、もうちょっと伸ばしてみようかなって思うようになりましたね。より細かく描いている作品もあったり、完成している作品をブラッシュアップしてみたり。展示するか、しないかは別として、制作の勢いの流れに乗って作品を増やしたりもしています」
オンラインで作品を観ることで
少しでも喜んでもらうための出品
映像や写真を駆使して配信をする美術館や博物館が少しずつ登場してきている。神山さん自身も、5月末に世界中のアーティストが参加するオンラインのグループエキシビションに参加が決まっている。
「本来は現場に足を運んで、生で観てもらいたいですけどね。飾られている作品を観るというのが当たり前でしたが、新しい扉が開いていっているように感じています。でも、ウェブで公開されるということは、現地まで行けないほど離れた距離にいる人も観られる環境になるので、入り口は広がりそう。みんな外出自粛で欲が溜まっていて展示の開催を求める声が僕のところにも届いているから、この状況が収束して集まれるようになったらみんなが来てくれるのを楽しみにしています。僕自身も観に行きたい展示がたくさんありますしね」
YES GOOD MARKETもオンライン開催となったが、ここでも気持ちは前を向いている。
「YES GOOD MARKETは、昨年参加させてもらってとても楽しかったから、お客さんと同様に僕も待ち望んでいました。会場に行けないのは残念ですが、中止にせずオンラインに踏み切ったのは新しくてすごいと思います。だから、オンラインでの開催は楽しみです。みんなに直接お会いすることができないけど、作品を観ていただくことはできるので。形は変われど、僕が描いた事実と観てもらうという喜びは変わりません。何事も前向きに考えることが、後にいい結果に繋がると思うんです」
そんな神山さんは、今回のYES GOOD MARKETのために、スペシャルな作品を販売してくれるそうだ。
「みんな楽しむことを忘れちゃっていそうだから、少しでも僕の作品を観て楽しんでもらいたい。まだ完全に決めかねていますが、クライアントワークの原画を出品しようと思っています。本来なら売ることはありませんが、喜んでくれる人がいると思うので、YES GOOD MARKETでしか買うことができない作品を出品します」
「早く展覧会に行きたいって言われますけど、もちろん僕も早く直接観せたい(笑)。でも、今は少しだけ辛抱して、YES GOOD MARKETはいつでもどこでも観られるから、アートやオシャレな服を観て、ちょっとでも元気になったり楽しんでもらえたりしたら嬉しいです」