2010年に設立したアイウェアブランドayameは、クラシックを追求しながら新たなるスタンダードを形にし、日本人にフィットする眼鏡やサングラスを提供している。国産随一の眼鏡生産地、福井県鯖江市で職人が丁寧に作り上げ、流行り廃りのないデザインに、確かな日本の技術が宿る。そんなayameの創業からデザインについてまでを語ってくれたのは、デザイナーの今泉 悠さん。
経験も知識もないまま
眼鏡作りをスタート
「眼鏡に興味を持ったのは23歳の頃。当時の職場の同僚が、すごく素敵な眼鏡を掛けていたんですよ。それまでは正直、眼鏡に対してネガティブな印象を持っていたんですけど、眼鏡を掛けている人ってカッコいいと感じました」
当時を思い返す今泉さん。自身も眼鏡を掛けてみようと思ったが、どうも違和感を覚えたそうだ。
「いろんな眼鏡屋さんに行って試着してみたんですけど、どれも自分にとってしっくりきませんでした。調べてみたら、福井県鯖江市が伝統的な眼鏡の生産地ということを知り、自分でも眼鏡を作れるんじゃないかと興味が湧いたんですよね」
“自分に似合う眼鏡を作りたい”。そんな気持ちから知り合いの繋がりをもとに鯖江へ足を運んだが、眼鏡を作るのは容易なことではないと肌で感じたそうだ。
「紹介してもらった鯖江市の国産眼鏡を扱うお店で理想の眼鏡を作りたいと相談したら、簡単には作れないよ、と断られちゃいました。それからいくつかのお店や工場にあたってみたけど、門前払いのように全然うまくいかなくて。そりゃあ、作りたいって言っているのに設計図も書けないし、眼鏡のことも知らないし、どこの人間かも分からないし。僕でも当然断ると思います。でも、自分にできないことが、すごく悔しかった。その思いが原動力になって、現在に繋がっていると思います」
それから独学で眼鏡をデザインし続ける毎日。
「綺麗だな、カッコいいな、と思うアイウェアを描き続けました。鼻の高さとか目の間隔とか、工学的な部分は分からないから、あべこべでしたけどね。でも、基礎知識がないからこそ自由なデザインができて、それがちょっとずつ形になっていきました」
柔軟な発想から生まれるデザインと
鯖江の職人による技術で完成
眼鏡を作りたいという初期衝動から約4年。ようやく最初の一本が完成した。
「同じ形を2年ほど描き続けて完成したのが〈NEW OLD〉。アップデートを重ねて、現在も販売しているモデルです。今販売している他のモデルも、すべてフリーハンドでデザインしたものなんですよ。工場から作れないと言われれば、なぜできないのかヒアリングして、デザインの微調整を繰り返しています。データや数値だけの話ではなく、体温を感じる人と人とのやりとりで作ったものが好きなんです」
「僕のモノ作りにおいては、なるべく過去は振り返らないようにしています。こだわるってすごく素敵な言葉ですけど、僕は視野が狭まってしまう気がするので、他の意見を柔軟に取り入れるようにしています。あと、デザインをする上で大事にしているのは熟成期間。例えば、〈NEW OLD〉をリリースするまで2年も掛かったのは、毎日描いては眺めて、デザインに飽きなかったから。デザインが完成しても、熟成期間を経てリリースするようにしています」
昨年、フラッグシップショップであるayame optical storeを千駄ヶ谷にオープンした。ayameの眼鏡やサングラスを実際に手に取れて、他ではなかなか見かけないカラーのオリジナルレンズにカスタマイズすることもできる。そして今年は、ブランド設立10周年を迎えた。
「10年やってきましたけど、やっぱり眼鏡を作るのは難しいです。眼鏡ってパーソナルなものなので、サイズが分かれば似合うとは限らないから、すごく繊細。だからお店を持ちたかった。フルラインナップで展開しているのはここだけなので、一度足を運んでもらえると嬉しいです」
YES GOOD MARKETでは
ブランド初のキャップを販売
ayameは、今年4月にモデルのパトリシオさんとSEE SEEの2者を迎えて、特注モデルを製作した。その繋がりもあって、今年のYES GOOD MARKETに初参戦を果たす。そこで販売するアイテムについて教えてもらった。
「帽子を販売させていただきます。僕、ベースボールキャップが好きでよく被っているんですけど、自分たちで作ってみようと思い、お店もオープンしたことだし記念に極々少量だけ作りました。眼鏡と帽子の関係は重要ですしね。最初は全体を同色の無地で作ろうと思ったんですけど、それだとグッズとして成り立たないので(笑)、少し気づいてもらえるようなデザインにしました」
「ボディはブラックに近いネイビー。夏も被りやすいようにコットン素材で作りました。コットンだとアタリが出てくるので、経年変化も楽しめると思います。フロントは立体刺繍で、後ろ被りもできるようにバックにはお店のロゴを。YES GOOD MARKETに、僕らが参加させてもらう機会があるとは思ってもいませんでした。こんな豪華な面々が揃うマーケットって、なかなかないですよね。いろんな化学変化が起こるマーケットだと思うので、当日が楽しみです」
information
ayame optical store
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-52-5 原宿ニュースカイハイツアネックス102
電話番号:03-6812-9119
営業時間:11:00〜20:00
定休日:水曜日