1998年の創業から、四半世紀以上の活動を続けている「graf」。家具作りからはじまり、いまでは空間デザイン、カフェ運営、そしてライフスタイル提案まで、暮らしにまつわるあらゆる事業を手がけている。そんなショップが、どうYES GOOD MARKET(以下、YGM)と融合を果たすのか。出店を前に、これまでの歩みと、今回のイベントへの思いを聞いた。
中之島という地を耕し続ける「graf」。

堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲である中之島に拠点を構える「graf」。もとは堀江に拠点を構えていたが、20年以上前に中之島へと越してきた。当時、周辺には国立国際美術館があるだけで、賑わいとは縁遠い静かな地域だった。

そこから長い年月をかけ、この地に根を張り続けた結果、中之島は変わりはじめた。2022年には大阪中之島美術館が開館し、さらに個性的なショップも点在するように。ますます盛り上がりをみせる中之島で、「graf」は愛着を持って活動を続けている。


現在の拠点は、1階にオリジナル家具とセレクトした雑貨、そしてカフェを併設し、2階はレジデンススペースや展覧会などが実施できるギャラリーとして運営している。
SEE SEEへの憧憬から始まった参加への道のり。

YGM参加のきっかけは、スタッフの熱い思いから始まった。この日話を聞いたのは、販売統括兼販促を担当する山田隆介さんと、企画・PRを手がける寺田愛さん。ふたりともYGMへの思いはひと一倍だ。
まず山田さんが参加を強く希望した理由は、主催者である湯本さんがつくるプロダクトに長年の憧れにあった。

「僕は湯本さんが手がける〈SEE SEE〉のことが昔から好きだったんです。ブランド初期の頃に発売されていたスケートボードのオブジェは衝撃的にかっこよかったし、キャップもめちゃくちゃ好きで。そんな湯本さんが手がけるマーケットだから、いつか参加したいとずっと思っていました」
一方の寺田さんには、湯本さんとの個人的なつながりがあった。

「夫の親戚が静岡にいて、10年ぐらい前に帰省した際、当時ヒロさん(湯本さん)がやっていたカフェにたまたま立ち寄ったんです。お店の作りも、スタッフの方も、すべてにカルチャーが浸透していて、とても感銘を受けました。ヒロさんともお話させてもらって、そのまま一緒に飲みに行ったかな。そこからSEE SEEのお取り扱いをgrafで始めたりと、定期的にやりとりをしていたんです。
そして今年の始め、再び静岡に帰省した際の出来事が、今回の出店につながった。
「そのときもヒロさんとご飯を食べていて『私たちも参加できたりするんですかね?』と売り込んで(笑)。その結果、出店できることになりました」

加えて、寺田さんは昨年、京都・岡崎公園で開催されたYGMも遊びに行っていた。実際に体験してみて、参加への思いがより強くなったという。
「お客さんも楽しそうでしたし、何より運営している側の皆さんの雰囲気がめちゃくちゃいいなと思って。とくに撤収の時間。いちばん大変なタイミングなのに、テキパキしているし笑顔が絶えない。これはいいイベントだなって確信しました」
「graf」は20数名の規模ながら、やりたいことがあれば、その人が旗を振って会社を動かしていくという風通しの良い組織だ。今回も山田さんと寺田さんが先頭に立ち、社内の機運を高めて実現に至った。

「ぼくらがやりたい思いを伝えれば、みんながしっかりサポートしてくれるのが「graf」の良さでもあります。もちろん、一人だけだとわからないこともあるし、知識不足なこともあります。でも、うちには様々な分野のスペシャリストが揃っているので、今回もみんなを巻き込んで、いいものを作っていけたらと思っています」
開催地であるグラングリーンについても「graf」には特別な思い入れがある。
「開催場所も、大阪で今1番ホットな場所です。それに、私たちもグラングリーン大阪内にあるうめきた公園内の什器やサインなどデザインのお仕事をさせていただいているので、思い入れが強いんです」と寺田さん。自分たちが関わった空間で開催されるイベントへの参加は、思いも一入なのだ。
grafならではの手仕事とスイーツ。

今回のYGMでは、「graf」の多面性を活かした出店を予定している。まずは物販。
「grafでデザインしているカトラリーやブレンドティー、小さなスツールなどを販売する予定です。物販はそれらをメインに据えようと考えています。それとYGMといえばアパレルが多いイベントです。そのなかで、僕たち目線でセレクトした作家さんの器や無添加のスキンケアアイテムなどで、マーケットにアクセントを加えられたらと思っています」と山田さん。
また、上述したように「graf」はカフェも併設されており、そこで提供されている食事やスイーツも評判が高い。今回は人気のカヌレなどの焼き菓子を提供する予定だ。

「といっても、普通の焼き菓子ではありません。うちのシェフは世界各国の食文化を、日本の食材と折衷させるのが得意なんです。今回販売する焼き菓子は、スパイスの使い方が特徴で、今まで食べたことないような焼き菓子になっているので、ぜひコーヒーやお酒のお供として味わっていただけたらうれしいです」
新しい出会いの場としての期待感。

寺田さんは、YGMを単なる販売の場ではなく、新しい出会いと発見の場としても捉えている。
「きっと、場所柄いろんな人が来場されると思うんです。いままで私たちがリーチできていなかったお客様との接点にもなる。そこで、私たちのことを少しでも知っていただいて、ここ(中之島)に足を運んでいただけるような、きっかけ作りになればうれしいですね」



山田さんも思いは同じ。世代交代が進むなかで、若い層へのアプローチに期待を寄せる。
「若い世代にはぼくらのことを知らない人がまだまだいるのが現状。なので、これを機会に、大阪のみならず、多くの地域の方に知っていただける機会になればいいなと思っています」

さて、25年の歴史を持つ「graf」が、YGMという舞台でどのような化学反応を起こすのか。「ものづくりを通して暮らしを豊かにする」という一貫した哲学のもと、中之島で培ってきた感性と技術を、梅田の新天地に、いざ、持ち込む。
graf studio(1F: graf shop & kitchen / 2F: graf porch)
住所:大阪府大阪市北区中之島4-1-9
電話:06-6459-2082(代表)
https://www.graf-d3.com/
Photo:Shinsaku Yasujima
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakada