大阪の工場街に拠点を構える「THE UNION」。15年前、仲間同士で立ち上げたこのブランドは、ブランド名と同じく、組織の構造はまさに“組合”。そして、メイドインジャパンならぬ、メイドインウエスト(西日本製)にこだわったものづくりを続けている。組合長であり代表である牧田耕平さんに聞いたのは、ブランドとしてあるべき姿と、YES GOOD MARKET(以下、YGM)にかける思いについて。
工場街で生まれた「みんなが社長」の哲学。

大阪の中心地からクルマで東に25分。そこは、ファッションのファの字も見当たらない、古くから続く工場街。その一角にあるひとつの鉄工所の小さい扉をあけ、火花が飛び散る現場を横目に階段をあがった先に「THE UNION」のオフィスがある。牧田さんの言葉を借りるなら「昔の不良漫画みたい」な場所だ。

2000年代から2010年代、東京のファッションシーンで大活躍していた牧田さんは、16年前に地元の大阪へ戻り「THE UNION」を立ち上げた。そしてここ、実家の鉄工所の空き部屋を改装し、オフィスを作った。
「THE UNION」の何が素晴らしいかというと、まずは組織の構造。牧田さんはたしかに代表ではあるけど、そこに属するスタッフも、ほとんどが「THE UNION」とは別の会社を運営する社長であったりする。だから「みんなが社長」なのだ。

「東京で働いているときに、裏方にもヤバいやつがたくさんいたんですけど、そういう人たちってスポットが当たりにくいし、待遇も決して良くなかった。その状況に違和感があったし、居心地が良くなかったんです。だから大阪でブランドをはじめるときに、上も下もない状況を作りたかったし、ブランド名にもある通り『ユニオン=組合』のような組織にしたかったんです」と牧田さんは話す。
いまは部下でもなく、同僚でもなく、仲間に囲まれているから、試行錯誤の連続ではあるものの、より自分らしく働けているという。

「生産を手掛ける人たちも仲間」だからこそ、「THE UNION」のアイテムの60%が大阪で、他の40パーセントも、製産地は岐阜や岡山など西日本に集中している。
「できる限り、日帰りで行けて、気兼ねなく話せる仲間たちと作っている感じです。これはブランド当初から意識していたこと。そこでお金が回って、みんなが豊かになっていければいい」
まさに服の地産地消だ。そしてブランドも成熟し、いまは再び、東京での新たな展開も準備中とのこと。今後の活躍にも期待しつつ、ここからはYGMでの出店について。
YGMで披露する、西日本の職人魂。

まず、「THE UNION」とYGMでのコラボレーションの紹介から。ひとつ目は、このキャップ。
「インラインでも販売しているものなんですけど、そこに僕らが掲げてるワーキングクラスの文字を入れて、ワッペンもつける予定。色味もいいでしょ?」
キャップ最大の特徴は、そのデザインに加え、ツバの部分に用いられている紙の芯。プラスチックのパキっとしているものが主流ではあるけど、ちょっとだけフニャッとしていて柔らかい。この肩肘張ってなさが、なんとも味わい深い。


シャツは、ポケットが大きめのシャンブレーで。
「90年代ぐらいのワークシャツをイメージして作りました。ぼくらのブランドの中に『ザ ブルーエスト オーバーオール』というデニムのラインがあって、そのラインのアイテムになります。なので、ディティールもデニムと同じで、フラップの形などは刀がモチーフ。ここにもプリントとワッペンをつけて販売予定ですね」
上記のアイテムはYGMのブースで販売することになっており、「THE UNION」はその他にも、ブランドとしてのブースも構える。

「そこではビールを販売しようとか、輪投げをやろうとか、くじ引きをしようとか絶賛協議中です。もう時間がないんですけど(笑)、お楽しみにしといてください」
アーバンリサーチとの深い縁と、初出店へ寄せる期待。

これまで、ブランドとしてマーケットイベントに参加することはほとんどなかったという。そのなかで、YGMへの参加を決めたのは「昔からの恩」だと語るのは、「THE UNION」の参謀であり、自身もOEMの会社の社長を務める西村さんだ。
「正直、最近はご一緒することはなかったんですけど、突然お誘いがきまして。ぼくらも外に出ていかないタイプで、最初は参加自体に迷いはあったんですけど、ぼくがOEMの会社を立ち上げたとき、アーバンリサーチさんがいなかったら、食えてなかった。そんな縁や恩もあったので、ぜひ参加させてくださいと」
牧田さんも西村さんの誘いに、二つ返事でOKを出した。

「以前からいいマーケットだっていう評判は聞いていたんです。知り合いもたくさん出店しているし、いつか出てみたいとは思っていて。そんなときに西村からその話があったんで、よし、出ようと」
会場の梅田についても期待を寄せる。
「グラングリーンでしょ? 梅田でしょ? めちゃくちゃ人が来るんじゃないですかね。サービス精神を発揮しすぎて、はしゃぎすぎないようぼくらも気をつけなきゃですね(笑)。いつもは接点のない方とも会えるだろうから、楽しみです」

「THE UNION」の形は、まさに現代の働く形の理想系だと思う。大企業に頼らず、仲間と力を合わせ、技術を磨き、自分たちの信念を貫く。そして、縁や繋がりで広がっていく、人との輪。
そんな彼らのモノづくりへの情熱とスタイルがYGMとどう共鳴するのか、こうご期待です。
THE UNION
https://theunion.jp/
Photo:Shinsaku Yasujima
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakada