中田みのりがYGMで描く、新しい服づくり。

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昨年に続き、モデルの中田みのりさんがYES GOOD MARKET(以下、YGM)に参加。2025年はTシャツ、スウェットパンツ、ジップアップパーカの3型を制作予定だ。最終的なデザインはまだ確定前だが、刺繍やグラフィックで“らしさ”をさりげなく効かせる構想は進む。昨年の経験で得た気づきと、今年のアイテムに込めたいこと、そして大阪で初開催となるYGMへの期待について聞いた。

中田みのり
なかだ・みのり。1994年、栃木県生まれ。モデルとして雑誌・広告で活動。ペットブランド「Ouida」ディレクター、フォトグラファーとしてもマルチに活躍。昨年はYGMコラボで3型を製作しいずれも完売。会場でも好評を博した。今年も「Ouida」としてYGMに出店。新作のTシャツを発売予定。 
Instagram:@minori_nakada

昨年の経験から見えたもの。

昨年のYGMで、中田さんは“服をつくる”ことと素直に向き合った。テーマは「自分が今着たいもの」。シャツ、サッカーゲームシャツ、スウェット、そのすべてに襟を付け、ほんの少しの特別感をプラスした。会場に立ち、来場者の表情を目の前で見る。全体のシルエット、ポケット口の角度、刺繍糸の彩度など、細やかなディテールが、着る人たちを高揚させていた。

「我慢しない服が好きなんです。着心地や扱いやすさを犠牲にしないこと。長く着られる厚みであったり、家で手軽に洗える素材、着こなしの幅を狭めないデザインであること。去年の3型で、その基準が自分の中でカチッと定まった感じがします」

“言葉にする”ことの手応えも大きかった。チームにイメージを明確に共有し、試作に修正を重ねる。イベント当日には、シルエット、ポケットのサイズ、刺繍の色、具体的な声が次のアップデートを指し示した。

「やっぱりお客さん(来場者)が着ることで服は完成するなって思いました。昨年のYGMの会場から受け取った反応は、ぜんぶ今年に持ち帰っています」

今年の3型に込めるアイデア。

今年はTシャツ(白)、スウェット素材のパンツとジップアップパーカ(ともにアイボリー)の3型を制作。全体のトーンは淡く、余白の多い設計。そこにYGMの記憶を留めておくように、刺繍やグラフィックでアクセントを置いた。

白Tは言わば“毎日のユニフォーム”。胸元にどこかに控えめなグラフィックをプリントして、その上から刺繍を重ねる案を温めている。

「プリントの上に、ちょっとだけ刺繍を重ねたいなって。平らな面に、手仕事の起伏を乗せるようなイメージです。ロゴ(YES GOOD MARKET / YGM)は近づいたときに気づくくらいがちょうどいいかなって思っています」

スウェットパンツは、街で穿ける軽さと、“着こなしの幅”を持った一本に。

「ウエストに異素材の生地をドッキングする案を考えています。短丈のトップスと合わせたときに、ほんの数センチの切り替えがコーディネートの重心をさりげなく締めてくれるような。もたつきにくいゆったりしたシルエットなので、ユニセックス前提で。メンズにも穿いてほしいですね」

パーカはワッペンと刺繍入り。毎日の相棒として脱着しやすいようフルジップ仕様にした。

「フードは大きすぎず首にきれいに添う高さで、袖口のリブのテンションも良い。何より裏起毛ではなくパイル地で、オールシーズン着られるから選びました。胸前に大きく“YES”って入れるのも可愛いかなって。YGMらしいし、同じ場を共有した記憶がふっと蘇る感じもいいなって」

“ゼロから”と“ベースアレンジ”という2つの壁。

今回は作り方そのものが、昨年と大きく違う。昨年は素材もパターンもすべてゼロからの提案だったのに対して、今年はボディメーカーの〈Fruit of the Loom〉が展開する既存アイテムを土台に、自分なりのアレンジを重ねていくアプローチだ。

「前回はパターンをイチから考える自由さがある反面、決めなきゃいけないことが無限にある“迷いの壁”がありました。今回は〈Fruit of the Loom〉のボディをベースにして、その上でどこに自分らしさを入れるかを見極める“制約の壁”がある。壁の種類が違う、っていう感覚で、最初は正直、戸惑いもあって……でも、ルールのある中で工夫していくのもすごく楽しいですね。限られた条件の中でも、刺繍の密度や位置、プリントのタッチで、ちゃんと“自分の温度”を残せるんだって」ゼロからの設計が強いオリジナリティを生むのは確かだけど、既存のボディを活かすことで届く速度や価格の設定、量産時の安定性もある。

「どっちが正しいとかじゃないんですよね。求める着心地や長く着るための前提がブレないなら、道筋が違ってもたどり着けるというか。そう意味で、今回はYGMという“場”に間に合わせることも大事なのかなって。その上で、自分の想いがちゃんと残るポイントをひとつずつ決めていくだけですね」

大阪で広がるYGMの未来。

今年は初の大阪開催。JR大阪駅直結の街区、グラングリーン大阪。ふらっと通りかかった人が偶然ブースで足を止める状況が容易に想像できる。昨年の京都とは動線も人のリズムも違うが、変えない軸がある。

「YGMだからできる服って、つくること・着ること・出会うことが同時に立ち上がる服だと思うんです。なので、できるだけブースに立って、サイズ選びの相談を受けたり、着方を一緒に探したりしたいですね」

仕上がりはまだ確定前。だけど方向ははっきりしている。長く着るための余白、やわらかなトーン、主張しすぎないロゴ、そして日々の生活に無理なく混ざるディテール。

「胸に“YES”と入ったパーカ。異素材の切り替えを狙ったスエットパンツ。ワンポイントのTシャツ。前提としてトータルコーディネートできるよう考えています。白とアイボリーで小さなコントラストをつくって、“いつもの自分”にほんの少しだけ新鮮さを足すような。秋の大阪で、3型それぞれの“正解”を、来場者のみなさんと一緒に更新していけたらうれしいですね」

Photo:Shinsaku Yasujima
Text & Edit:Jun Nakada