東京・渋谷の人気店「酒井商会」が、今年もYES GOOD MARKETのオフィシャルフードを担当。昨年は雲仙ハムカツ、ゆず塩唐揚げ、山椒ポテト、夏野菜カレー、五島うどん、ステーキ串、ナッツなど、7品前後で会場を沸かせ、価格も手に取りやすいレンジで揃えた。そして今年は、大阪・うめきた公園へ。メニューはまだ決まっていないが、「尖りすぎず、でも酒井商会らしさは残す」と代表の酒井さんは言う。昨年の学びを起点に、今年の構想を聞いた。
昨年の学びと“場の熱”。

2018年にオープン以降、素材を活かした丁寧な手仕事が評判を呼び、今では簡単には入店できないほどの人気店となった酒井商会。そんな同店が昨年、YGMのオフィシャルフードとして本格参戦。役割の捉え方ははっきりしている。「YGMは個性の強い出店者さんが多いので、僕らはオフィシャルフィードとして、あくまで定番を念頭に置きながら、“息抜き”になるような一皿をイメージしてメニューを考案。尖りすぎず、でも酒井商店らしさが感じられるよう心がけました」。結果、雲仙ハムカツと山椒ポテトは想定以上の動きで、一時は品切れも出た。


「イベントは“場の熱”で料理が完成するんです」と酒井さん。会場の気温や人の流れ、夜の涼しさ。夕方以降に出汁の効いた温かい一品(昨年は五島うどんなど)が伸びた手応えも記憶に新しい。「ほっこりする汁物を一品、今回も入れたいですね」。和食店としての意味を、屋外でもきちんと立てている。

運営面の学びも大きかったという。器の選定やYGMロゴのスタンプ、ビールの泡にロゴをのせる食べられるフィルムなど、オフィシャルらしさの演出を試し、仕込みの量、人員配置、動線の改善点を洗い出した。「切らさない」を合言葉に、今年は7〜8品構成を想定し、人数も増やして臨む予定だ。
大阪版オフィシャルメニューの構想。

舞台はうめきた公園。「立地的に今年は昨年以上に人が多いと思う」という酒井さんの言葉通り、駅直結の大きな動線、三連休、屋根付きの快適さ。さらに大阪万博の閉幕直前とあって、昨年より来場者が多いことは容易に想像できる。メニューは現時点で未決定。ただ、酒井商会の“核”はもう見えている。


まず外さない軸。「ハムカツと唐揚げは用意しようと思います」。屋外では、手掴みできるキャッチーさや回転の速さ、子ども連れでも手軽に食べられるメニューは必須。もう一つは出汁の一品。「日が落ちてからの気温を見越して、うどんや雑炊系を候補に置いています。ジャンクなものが続くと、出汁が恋しくなる瞬間がきっと来ると思うので」。

価格設定は昨年を踏襲した。「手に取りやすいレンジ(700円前後)を基本に、ステーキ串のようなプレミアム枠は別軸で」(昨年は1,500円帯)。一方で“被らない”ことも重視するという。「大阪らしい名物は地元の出店者さんに任せたい。僕らは“いつもの酒井商会”を、YGM仕様にアレンジするだけです」。メニューは運営チームとの打合せを経て最終決定するが、品目と役割のバランスはこう描いている。
①手掴み:雲仙ハムカツ・ゆず塩唐揚げ・山椒ポテト
②汁もの:出汁のうどん or 雑炊
③プレミアム枠:炭火系の串(産地・部位は調達次第)
④おつまみ:ミックスナッツ
⑤ドリンク:日本酒は軽快なものを中心に、ワインは会場の温度次第で厳選

また、他の出店者との被り回避のため情報共有を小まめに行い、追加仕込みのトリガーも事前に定義する。「来場者や現場の状況など、どう転ぶか読めないのがイベントの怖さであり醍醐味。だからこそ、“最後まで切らさない”よう慎重に進めます」。
オフィシャルの矜持と“らしさ”。

酒井商会の“らしさ”を言葉にするなら? そう問うと、返ってきたのは素材への実直さだった。「三つ星が使うような食材でも、堅苦しくなく、フレンドリーに楽しめる一皿を提供したい」。産地に通い、卸の現場を見て、最適な素材を選ぶ。その背景が、今年のYGMでも感じられるはずだ。


「尖りすぎず、でも僕らの温度は確実に残す」。器やスタンプといったオフィシャルの所作は最小限で効かせながら、味は“毎日の延長”に着地させる。現場で鍋の高さが変わっても、熱源が違っても、同じクオリティで出す経験値。海外のケータリングで培ったという即応力も頼もしい。

「休憩がてら、まずはハムカツを。夜は出汁の一杯で乾杯しましょう!」。メニュー確定はこれから。それでも、酒井商会の屋台骨はもう立っている。“渋谷の味”を大阪のど真ん中へ。あとは当日の“場の熱”に委ねるだけだ。
酒井商会
住所:東京都渋谷区渋谷3-6-18 荻津ビル 2階
営業:17:00〜23:00(21:30 L.O)
定休日:日、不定休
Instagram:@sakai_shokai_tokyo
Photo:Shinsaku Yasujima
Edit & Text:Jun Nakada