大阪の都心部を南北に流れる、東横堀川沿いに佇む立ち飲み「ヨコボリ」。オフィス街として知られる北浜エリアの一角にありながら、夜になると服好きや音楽好きといったサブカル臭が漂う人たちが、ここに吸い寄せられていく。2020年のオープンから5年が経とうとする今、オリジナルのアパレルブランドも静かなブームに。YES GOOD MARKET(以下YGM)への出店を前に、お店のこと、ブランドのこと、YGMのことを聞いてきた。
酒飲みによる、酒飲みのための店。

「この地域で働きはじめて、かれこれ20年ぐらいです」と語るのは、「ヨコボリ」のオーナーである中山亮さん。2020年に「ヨコボリ」をオープンする前も、同じく北浜エリアにある中華料理屋で10年以上も腕をふるっていた。だからこそ「ヨコボリ」のメニューは、本格的で独創的な中華料理がメイン。立ち飲みスタイルではあるけれど、その味は本物。舌の肥えた客も唸らせている。


中山さんは自他共に認める酒好きでもある。呑兵衛の気持ちが痛いほど分かるから、ひと皿ずつのポーションは少なく、ビールや角ハイは400円で提供。酒好きならではの心配りをお店のあちこちで感じることができる。
「デイリーに使ってほしいし、ひとりでも気軽に来られるような設定にしているんです。月に1回の特別な日にっていうよりも、仕事帰りにビール1杯と1品だけみたいな使い方もしてほしくて」

さらに、ここはナチュラルワインもすごい。20種類ほどが常時グラスで提供されており、全国のワイン好きたちがこぞって訪れている。ワインのストックは約1500本あり、ちょっとしたワインショップより全然多い。その他、日本酒から焼酎までなんでもござれだ。

ちなみに「ヨコボリ」で提供される黒ラベルの生ビールは、大阪で一番うまい。その証拠は……、まだオフレコなので、近日中にお店のSNSで発表されるかも。
怪我がきっかけで生まれた「IN SYU SYU GI」。

「ヨコボリ」の魅力は飲食だけにとどまらない。中山さんが手掛けるアパレルブランド「IN SYU SYU GI」は今や知る人ぞ知るブランドになっていて、即完するアイテムもあるほど。その始まりは意外にも、怪我がきっかけだった。
「ヨコボリ自体はもうすぐ5年になるんですけど、オープンして1年目のときに骨折してしまって。お店には立てなかったので、骨折の治療費を稼ごうみたいな感じで(笑)、オリジナルのTシャツを作って販売したんです。すると、お客さんも『はよ戻ってこい』の気持ちで、予想以上に買ってくれて」

そこから商品数も拡大していき、本業に支障が出るほどの売れ行きに。店内でも購入することができ、観光客もお土産がわりに買っていくそう。とはいえ、クオリティはスーベニアの域を軽く超えていて、ボディもデザインも随所にこだわりが感じられる作りに。

ブランドネームも実に中山さんらしい。「IN SYU SYU GI」=飲酒主義。コーチジャケットの背面のロゴは、下に進むほどに、文字が揺らいでいく。ベロベロになって、酩酊していくさまを表している。
今回のYGMでは、本職である食と自慢のアパレルを引っ提げて参加する。
絶品フィンガーフードと、売り切れ必至のアパレルたち。

「ヨコボリ」は各方面からイベント出店の誘いが絶えない。ただ、イベントがあるタイミングは決まって週末で、飲食店にとっては一番の稼ぎどき。すべてに応えるのは難しいという。
「でも、今回イベントに誘ってくれたのは、常連さんでした。だから儲ける儲けないの話じゃないんです。人との繋がりは大切にしたいし、その常連さんのことも大好きやから」と出店した理由を教えてくれた。

YGMではまず、「ヨコボリ」の特色を活かした料理を提供予定。「いま考えているのは、特製のハーブとスパイスを使ったソーセージ。それに自家製のBBQ醬を添えようかなと。あと、うちにイタリアン出身の子がおるんで、その子に揚げピザを作ってもらおうかなとも思ってます。それから大人のおっとっと。これは店でも出しているメニューで、山椒を自分でブレンドして、おっとっとに振りかけただけなんですけど、これがまた酒と合うんですよ」。
アパレルは、初お披露目になる新作に加えて、コラボ商品も仕込み中とのこと。上述したコーチジャケットも並ぶ予定。

「どうなるかギリギリまで分からないですけど、とにかく楽しみです。会場のグラングリーンも立地がいいし、たくさんの人に来てほしいですね。あとグラングリーンって、周りの商業施設に飲み屋が結構入ってて、知り合いもお店をやってたりするんです。なので、そっちに梯子したり、またイベントに戻って来たりみたいなのもいいですよね」
「ヨコボリ」は、北浜のハブとしても機能していているけど、YGMでもきっと、人と人をつなぐ役割を果たしてくれるはず。 中山さんが「IN SYU SYU GI」に込めた思いも、そこにある。
「ぼくらの服を会話の糸口というか、コミュニケーションツールのひとつとして、大阪以外でも輪が広がってくれたらいいなって」

食と酒、そして服を通じて人をつなぐ「ヨコボリ」と「IN SYU SYU GI」。YGMでも、きっと新たな「乾杯」を、たくさん生んでくれるんだと思う。
ヨコボリ
住所:大阪市中央区東高麗橋5-3
時間:15:00〜23:00(L.O.22:00)
予約不可、電話無し、現金のみ
https://www.instagram.com/yokobori.yb/
Photo:Shinsaku Yasujima
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakadap