東京を拠点に多角的なアプローチをかけるクリエイティブコレクティブUNTRACE。空間デザインやブランディング、コンテンツ制作を手掛けるなか、表現のひとつとして展開する同名のウエアブランドがYES GOOD MARKETに参加する。販売するアイテムの目玉となるのは、フットボールゲームシャツ。シンプルなデザインが大半を占めるUNTRACEのラインナップに際立つ、そのプロダクトの完成までを辿る。
性格が異なる2つのライン。
UNTRACEは2020年にTシャツをローンチし、翌年に2022春夏コレクションを発表。現在は国内はもとより、アジアやヨーロッパのセレクトショップでも販売されている。“機能と実用の検証”をテーマに、時代によって変化するライフスタイルにおいた機能性を追求するブランドだ。
ウエアの特徴は、ロゴやグラフィックを極力削ぎ落としたシンプルなデザイン。なによりこだわっているのは着心地の良さ。快適な素材や緻密に設計したパターン、動きやすいシルエットで構築されていて、日常生活にストレスを感じない、アウトドアやスポーツとは異なる機能性でファッショナブルにデザインされている。
カラーバリエーションはダークネイビーやブラック、ホワイトなどの定番が多い。そこには、UNTRACEだけを使って全身コーディネートするのではなく、他のブランドも取り入れて、着こなしの幅を持ってもらいたいという思いが込められている。そのスタイリングの軸にUNTRACEを配しやすいようスタンダードなカラーで展開しているのだ。このラインナップを“ベーシックライン”と呼んでいる。
UNTRACEの活動で大切にしているキーワードが“Design Practice”。UNTRACEはそれぞれの単語を独立して捉え、デザインは完成することなく、トライ&エラーを続けながらアップデートを繰り返す。その姿勢をウエアでも体現。“ベーシックライン”に縛られず、新たな表現の可能性を探求して生み出している“スポットライン”も展開する。既存のテーマに固執しない自由な発想で、その時々の気分をウエアへと落とし込む。
今の気分を反映した、クラシカルとモダンの調和。
その“スポットライン”のひとつとして作られたのが、YES GOOD MARKETで販売するフットボールゲームシャツ。デザインを手がけたクリエイティブディレクターの小野清詞さんは、こう話す。
小野「YES GOOD MARKETに誘っていただいて、なにを販売しようか考えた結果、個人的に静岡と聞いて最初に思いつくのは、やっぱりサッカー。最近なんとなく、フットボールシャツを作りたいと思っていたので、ちょうどいいタイミングでした」。
さまざまな要素を散りばめ、古着と現行品のニュアンスを同時に感じられるデザインに仕上げた。
小野「プレイも振る舞いも大好きだったエリック・カントナを彷彿とさせる90’sのユニフォームがシルエットのモチーフ。そこに、良くも悪くも強烈な印象を受けるフーリガンのイメージがある、リヴァプールやイングランド代表のユニフォームからサンプリングしたデザインを落とし込んでいます」。
そして、左胸に“Design Practice”、背中にリヴァプールの戦術である“ストーミング”とキリル文字で配置。注目すべきはそれらのデザインだけではなく、素材やディテールにも抜かりないのがUNTRACEらしい。
小野「少し張りのある、ウール見えするポリナイロン生地を採用して、上品な雰囲気のなかにゲームシャツの佇まいを残しています。ボトムスはトラックパンツやデニム、トラウザーにも合わせやすく、普段着として着られるようにバランスを調整しました。肩にステッチを施して、遊びのあるアクセントも加えています。襟が付いているから、ゴルフのプレイなどでも着用してもらえるかと」。
ゲームシャツに合わせて、ショーツも製作。
小野「ストレッチの効いた素材を使っていて、ワタリ幅も十分にあるから涼しいし、実際にサッカーができるくらい動きやすいです。ショーツはスポーティな印象が強いので、裾をアクティブなターンアップ(ダブル)仕様に。随所にステッチを入れて英国紳士的なノリと往年感をいい塩梅でプラスしています。ゲームシャツとセットアップで着用すれば、さらに往年感を演出でき、いい雰囲気でスタイリングできると思います。もちろん、さらっと無地の白Tなどに合わせても相性がいい。ともあれ、ウィイレやサカつくあたりにハマっていた人たちに送る、“Design Practice”アイテムです」。
PHOTO/MASASHI URA、RYUTARO YAMAGUCHI TEXT/SHOGO KOMATSU