食にこだわる大人が偏愛する居酒屋、酒井商会。

interview

渋谷駅東口から徒歩数分、雑居ビルの2階にひっそりと佇む酒井商会。ここは、食通も惚れ込む隠れ家のような居酒屋で、連日のように予約席で賑わいをみせる。そんな人気店が、今年のYES GOOD MARKETに出店。ショッピングを楽しみながらアートや音楽に触れ、さらにおいしい食事でお腹も多幸感で満たしたい。

作り手の思いを込めて仕立てる料理。

ファッションやアートや音楽に加えて、食もYES GOOD MARKETに欠かせないエッセンス。毎年、人気の飲食店に参加していただいているが、今年もすばらしいお店が多数ラインナップしている。そのひとつとして楽しみなのが、酒井商会だ。

この居酒屋で店主を務める酒井英彰さんは、大学卒業後オーストラリアのフレンチレストランで料理人としてのキャリアをスタート。帰国後は改めて料理を基礎から学び、経営の知識を深め、修行のすえに辿り着いたのは和食だった。

酒井「和食が好きだったので、追求しようと和食の道に。どのジャンルの料理も共通している部分があるけれど、和食は包丁の使い方や素材の扱い方など、独自性が強いんです」。

そして2018年に独立し、酒井商会を2018年にオープン。言葉では説明しにくい場所にあり、まさに知る人ぞ知る居酒屋といった雰囲気だ。階段を登り扉を開くと、騒がしい渋谷を忘れさせるほど落ち着いた空間が広がる。

酒井「料理で心掛けているのは、素材を丁寧に扱うこと。飾りっ気のない料理ですが、素材のおいしさを伝えたいと思っています」。

メニューには魚や野菜など旬の食材を使った料理が並んでいて、決めかねる場合はおまかせもできる。合わせるお酒は、厳選された日本酒はもちろん、ナチュールワインやクラフトビールも豊富に揃い、和食とのペアリングを楽しめるのも特徴だ。それらの素材やお酒には、酒井さんの思い入れが込められている。

酒井「地方の農家さんを訪ねて一緒に畑仕事をしたり、酒蔵やワイナリーでお酒作りを手伝ったり、できる限り生産者さんのもとに足を運ぶようにしているんですよ」。

生産者に直接会って話して、作業も手伝い、作り手の愛情を知る。その過程を経ているからこそ、舌の肥えた大人たちも唸る料理に仕立てられるのだろう。

そして、料理やお酒以外にもこだわりが光る。

酒井「お店で使っているすべての器は、どこで誰が作ったか説明できます。和食を選んだのは、器に盛り付けた見た目も料理の一部となる、というのも理由のひとつ。素材もお酒も器でさえも、生産者さんの顔が見えるものを選ぶようにしています」。

根底にあるのは人との出会い。

おいしさや見た目の良さだけで選ぶことはなく、人との繋がりにも重きを置いて厳選する姿勢は、普段の生活から変わらない。

酒井「家でも同様に、大好きな作家さんの器やグラスを使っています。ものの選び方に基準はありませんが、その時々の人との繋がりで、純粋に良いと思ったものを使うことが多いです」。

酒井商会は、たびたびイベントにも出店しているが、そこでの出会いに期待を寄せている。

酒井「例えば、日本酒のイベントに参加すると、知り合いの酒蔵さんから、別の酒蔵さんを紹介していただくこともあって、実際に飲んでみると必ずおいしい。そういった交流の広がりを楽しみにしています」。

酒井「感度が高い人は、あらゆることに対して好奇心が強いと思うんです。この前も、フォトグラファーの知人と話していたら、食材の情報も詳しくて。撮影先で出会った農家さんが、無農薬の肥料を使っていておもしろいから、一緒に訪ねてみない? と誘ってくれました。人との出会いや会話が大好きで、料理のアイデアはそこから湧いてくることもあるんです」。

YES GOOD MARKETも出会いの場。各地から集まる出店者や参加者との繋がりを、酒井さんも楽しみにしているそうだ。

酒井「いろんな人たちとの交流があると聞いています。どんな料理をご提供すれば、みなさんに喜んでもらえるのかと考えていて。ひとつは恵比寿にある姉妹店、創和堂のメニューにある原始焼。炭を立てて炙る串焼きで、鮎を焼きあげます。あと、酒井商会でもみなさん召し上がる「雲仙ハムカツ」や、ご飯もので「ともうろこしと鰻の土鍋ご飯」もいいかもしれませんね。お酒と一緒に楽しんでもらいたいので、日本酒も持っていこうと思っています」。

予約の取りにくい人気店の出店も、今年のYES GOOD MARKETの楽しみに数えたい。

PHOTO/MASASHI URA TEXT/SHOGO KOMATSU