BOKU HA TANOSIIが大阪から運ぶ、10年分の熱。

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少しでもファッションに興味がある人なら「BOKU HA TANOSII」の文字を見たことがあるはず。コミカルで違和感を覚える文字の羅列の奥には、約20年の友情、そして約10年にわたる試行錯誤があった。「THEモンゴリアンチョップス®️」の1アイテムだったTシャツから独立して生まれたこのブランドは、YES GOOD MARKET(以下、YGM)に初めて名を連ねる。彼らがものづくりを続けてきた理由と、大阪という場所が育てたもの、そして京都で届けたいものについて聞いた。

兵庫県出身の安藤仁彦さん(写真左)と、大阪府出身の山本健太さん(写真右)。専門学校で出会い、卒業後は安藤さんが古着屋でバイヤーに、山本さんがセレクトショップで販売員になる。2013年、山本さんが安藤さんを誘って「THEモンゴリアンチョップス®️」を、2016年に「BOKU HA TANOSII」をローンチした。
https://www.instagram.com/bokuhatanosii/

「僕は」の「は」がローマ字だと「HA」。これはいける。

ーまずは、ブランド設立の経緯から聞かせてください。

山本:2013年に、ふたりで「THEモンゴリアンチョップス®️」としての活動を開始して、2014年からコレクションをスタートしました。当時はブランドの1アイテムとして「BOKU HA TANOSII」というグラフィックが入ったTシャツを売ってたんですけど、それが好評で、2016年に「BOKU HA TANOSII」だけを独立させました。

ー「BOKU HA TANOSII」というブランド名は、どこから生まれたんですか?

山本:ちょうどブランドをやる前にフリーペーパーを1年くらい作ってたんですけど、そのときに「将来なんかおもろいことしたいな、映画でも撮ろうぜ」みたいな話をしていたんです。僕らだけが楽しくなる映画を撮ろうって。そのときに、僕が付けたタイトルが「僕は楽しい」だったんです。それをローマ字にしてみたら、めちゃくちゃハマりが良くて。「僕は」の「は」がローマ字だと「HA」になって、変な違和感も出て、これはいいぞと。

安藤:もっと遡ると、僕が仕事でアメリカによく行っていた時期があって。そのときに、向こうの人は自国の言葉のメッセージTだったり、大学のカレッジTを普通に着ている一方で、日本人は、意味のわからない英語のTシャツは着るのに、どうして自国の言葉のものは着ないんだろうって。だったらローマ字に落とし込めば着てくれるかもって思ったし、海外の人も発音はできるから、「なんなんそれ?」ってなったときにコミュニケーションのきっかけになるんじゃないかと考えたんです。

ー最初は評判が良くなかったそうですね。

山本:めっちゃスベってたと思います(笑)。「そのTシャツ何なん」みたいな否定的な反応が多くて。なかなか理解されなかったですね。

ー人気になったきっかけがあったんでしょうか?

山本:あるお店で、女の子が買ってくれたんですけど、その子がよく着てくれてたおかげで、どんどん広がっていった感じです。

安藤:Tシャツの値段も、当時の相場より少し高めに設定していました。安くすると、いわゆるネタTシャツみたいに見えてしまうから。ロゴは刺繍で仕立てて6500円くらいでしたかね。

尖っていた20代と、肩の力が抜けた40歳。

ー東京に進出しようと考えたことはあったのでしょうか?

安藤:2年目くらいのときかな。それまで大阪だけでやっていた展示会を、東京でも開催したんです。でも、蓋を開けてみると、電話では「行く」って言ってくれていたのに、ほとんど来てくれなくて。そこで一度、東京の人を信じられなくなってしまいました(笑)。今思えば、「だったら自分たちで店を作って売るしかない」という覚悟ができたし、いいきっかけになりましたね。

ー大阪という場所が、ブランドに与えている影響はあると感じますか?

山本:いろんな人と話していて感じるんですけど、東京には「おもろい」と「ファッション」を結びつける文化があまりない気がしていて。大阪だと、「おもろい」がそのままファッションに繋がる感覚がある。僕らのやってることもそうで、一見むちゃくちゃに見えると思うんですけど、大阪ではファッションとして受け入れてもらえてるのかな。そういう意味では、好き放題できるのは、大阪だからこそかもしれないですね。

安藤:あとは単純に、東京はいろいろコストが高くて現実的にやっていけないだろうな、というのもありますね。

山本:そうやな。

安藤:あと、たまに東京に行くとチヤホヤしてもらえるんで、こんくらいの距離感がちょうどいいです(笑)。

ー「BOKU HA TANOSII」は設立から10年が経ちました。当初に比べて、ブランドとしてどう変化してきていますか?

山本:そもそも、最初はアイテムもすごく少なかったんです。色も赤、白、黒しかなくて、TシャツとロンT、スウェット、キャップ、バッグくらい。それがブランドとして続いていく中で、グラフィックを増やしたり、「THEモンゴリアンチョップス®️」の視点で「BOKU HA TANOSII」を表現したらどうなるかとか、いろいろ試してきました。ただ、濃すぎるものは求められていないなというのも分かってきて、最近は自分たちが楽しいと思うことを、あまり深く考えすぎずにやるのがいいんじゃないかというところに落ち着いてます。

安藤:今年で40歳になるので、年齢もあるかもしれません。はじめたばかりの20代の頃は、もうめちゃくちゃ尖ってたしな。

山本:暴れまくってたな(笑)。

直接伝える場所は、思っていたより貴重だった。

ーお二人はYGMの存在をご存知でしたか?

安藤:実は去年もお誘いいただいてたんですけど、それまでは全然知らんくて。で、去年、僕らは別のイベントに出店してたんですけど、インスタでめっちゃ盛り上がってるのを見て、二人で「YGMに出とったらよかったな」って(笑)。

山本:そもそも、ぼくらはイベント出店自体をあまりしてこなかったんです。出店しはじめたのは本当にここ1、2年ぐらいで。

ーあえて出店しなかった理由があったんですか?

山本:いま考えると、完全におごってたんですけど、自分たちが前に出ることで、ブランドの価値が下がるんじゃないかと思ってたんです。ただ、実際に参加してみると、自分たちがやっていることを直接伝えられる場所ってすごく貴重だったんだなと。

安藤:いまは積極的に外に出ていくようにしています。僕らが実際に会場に行くことで、売り上げだけじゃなく、インプットできる部分がある。お客さんの声を聞くというより、直接話すこと自体がクリエーションに影響してくるんです。工房にこもっているだけだと、なかなかいいものは生まれてこないですから。

ー今回、YGMに出店することに決めた理由を教えてください。

山本:前回のYGMが良かったという話を周りから聞いていたのと、単純に外から見て楽しそうやなと思ってたので。あと、前回開催されたときの、一つひとつのブースの作り込みがすごくて。

安藤:引きで見たときに、めっちゃ丁寧やなと思ったよな。

山本:僕らも世界観を大事にしているので、そこに惹かれて「またやるならぜひ呼んでください」と伝えていたんです。それで、今回声をかけていただきました。

ーYGMに出店するにあたり、期待することはありますか?

安藤:「BOKU HA TANOSII」の名前を知ってもらえている手応えはあるんですけど、その反面、名前は知っていても店に来たことがない、実物を見たことがない、という方も結構多くて。そういう方と直接話したり、手にとってもらえるきっかけになれたらとは思ってます。

山本:いろんな出店者さんが集まるイベントだからこそ生まれる出会いもあると思ってます。お客さんだけじゃなく、携わっている人たちとの繋がりも広がったらうれしいですね。

刺繍の位置ひとつにも、念を込めて。

ーYGMの当日、持っていくものを教えてください。

安藤:メインはユーズドのTシャツに刺繍を入れたシリーズです。すべて一点物ですね。あとは靴下やボクサーパンツも持っていく予定です。

ー「BOKU HA TANOSII」のアイテムは、本当にユニークなものばかりだなと思うのですが、ものづくりで大事にしていることはなんなんでしょうか?

山本:表面的なものだけじゃなくて、そこに念を込めることです。グラフィックだったり、縫製だったり、シルエットだったり、どこでもいいから念を込める。そうじゃないものは、販売しても意味がない。ユーズドのTシャツもなんとなくやってるわけじゃなく、1枚ずつ刺繍の位置と色を僕らが見て決めているので、正直めちゃくちゃ時間がかかるんです。

安藤:正直、割に合ってないです(笑)。ただイベント当日は、たくさん仕込んで行くので、ぜひ楽しみにしていてください。

ー最後に、お二人は学生の頃からお友達で、いまは一緒に仕事をされています。プライベートでも出かけることがあると聞きました。仲良くい続ける秘訣はありますか?

安藤:たしかに、ずっと仲いいですね。釣りも行くしな。

山本:そやな。

安藤:たぶんですけど、育ってきた家庭環境が近いっていうのもあるかもしれない。親の収入も同じくらいだし、年齢も一緒だし、掘ってきたカルチャーも一緒というか。だいぶ通じ合ってると思うし、そういう相手が近くにいてくれるのは、なかなかないことだなと思いますね。

山本:僕が先に独立していたので、安藤を引き抜くような形になってしまったんですけど、安藤が元々いた会社の社長に「安藤とブランドをはじめる」って話したとき「友達2人で始めたら、絶対もめるぞ」って散々言われたんです。そのときはピンと来なかったんですけど、10年以上経った今も、ピンとはきてないですね(笑)。

Photo:Shinsaku Yasujima
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakada