和のイメージが強い京都だが、実はパンの街としても有名だ。総務省の家計調査をもとにした「パン好きな都市」ランキングで、近年京都は一位になった。たしかに京都市内は、老舗から新進気鋭まで多種多様なパン屋が並び、市民から旅行者まで数多くの舌を楽しませている。そして、そんなパン激戦区である京都市内に、ユニークなパン屋が誕生した。
オルタナティブ系パン屋の最右翼。

「this is ormary store」は、自家製パンと料理をアテにお酒が楽しめる立ち飲み屋という一面を持つ、テイクアウトもできるパン屋だ。営業時間は、パン屋には珍しい14時から21時まで。
平居「パン屋というと、朝早く開き、夕方には閉まるお店がほとんどですよね。京都にはすでに多くのパン屋があるので、他とは変わったことをやるという意味もあるし、夕方以降に買いたいお客さんのニーズもあるのではと考えました」
こんな発想が出てくるのも、店主の平居さんのキャリアがいわゆる王道ではないからかもしれない。
平居「パン屋で修行したことはないんです。19歳から20年近く独自にパンをつくってきました。直前では、焼き鳥屋で働いていましたが、お店で僕が焼いたパンを出すこともありました」

「this is ormary store」では、厳選した小麦と自家製天然酵母を使う。平井さんがドイツパン好きということから、バゲットやプレッツェル、ライ麦パンや惣菜パンなど、ハード系のパンが店頭に並ぶ。食べた人は「これでパン屋の経験がないのか!」と、いい意味で驚くことが多いらしい。



そして、このお店はパンだけではない。お酒は、ナチュラルワインをメインに取り揃えているが、今後さらに増やしていく予定。そして、料理はベースを大事にしながらも、他のお店にはないオリジナリティに溢れる。例えば、中トロとブラッターチーズに豆豉醬やサワークリーム、自家製ミックススパイスで味付けたものや、しめ鯖とブルーチーズにマッシュポテトや塩とスパイスとコーヒーの粉末をまぶしたものといった、食材を片っ端から並べるだけでもその独創性は伝わってくるだろう。こういった組み合わせは、料理に対する幅広い知識と経験、そして鋭いセンスがなければ成立しない。


お寺の倉庫をうまく転用したというお店の内外装も素敵だけど、お店の雰囲気は平居さんの人柄もあってか、どことなくマイペース。忙しいときにヘルプで入るスタッフが店主のお母さんだったり。さらに、自身が阪神ファンということでつけた店名は、往年の名選手・オマリーに由来するものだそう。ただし、“阪神色”が出ているのは店名のみ。お店はどなたでもフランクに飲めるので、ご安心を(笑)。
this is ormary storeのブースに並ぶもの。

「YES GOOD MARKET」では、どんなものが並ぶのだろう。
平居「もう少し詰めていきたいと思いますが、ワインとよく合うものを提供したいなと。キッシュやスープ、パンとかワンプレートものもいいですね。あとはこのイベント限定のものを何か出そうと考えています」


限定品とくれば、パン好きならずとも食指が動く。では、「YES GOOD MARKET」への意気込みを最後に。
平居「まだできて一年も経っていないので、多くの人に『this is ormary store』を知ってもらえたら。ウチの店は、京都駅からも近くて徒歩で15分、車でも5分ちょっとくらいなので、新幹線に乗る前にサクッと飲んで帰る遠方の人がいたり、パンを買ったりお酒を飲みに来る地元の人がいたり、お客さんの客層は幅広いんですが、さらにいろいろな人たちに来てもらえたら嬉しいですね」
this is ormary store
住所:京都府京都市下京区本塩竈町533-3
営業:14:00〜21:00(LO20:30) ※7、8月時間変動有り
定休日:火、他不定休有
Instagram:@this_is_ormary_store
Photo:Naoto Kobayashi
Text:Shinri Kobayashi
Edit:Jun Nakada