燻製の香り漂う店内でひとと料理が交配するRUTUBO。

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我々取材班が、お店でひと足先に待っていると、自ら仕入れを済ませてきた「RUTUBO」の代表・小坂田さんがバイクで戻ってくる。店の奥で特別な燻製機械が煙を吐き出すのを横目に、小坂田さんとの小気味いいやり取りがはじまった。

人当たりは軽やかに、燻製はズシンと重く。

「RUTUBO」は3店舗ある。1号店となる「izakaya RUTUBO」は、ジャズ、スコッチウィスキー、燻製をテーマに、6年前に祇園にオープン。次いで2号店が、聖護院にある「RUTUBO燻製工場」。コの字型の立ち飲みタイプで、日本酒と焼酎がどちらも常時30種類以上ある。そして、1年前にオープンしたのが、立ち飲み居酒屋と燻製工場が一体になった、大宮駅からほど近い場所に構える3号店「RUTUBO 第二燻製工場」。今回取材班が訪れたのは、同店。不定休で週3、4日オープンとのことだが、ラッキーなことにこの日はオープンしていた。

「RUTUBO 第二燻製工場」のガラスの入り口扉を開けると、目に飛び込んでくるのはDJブース。ターンテーブルの上を回るレコードの音楽が、JBLの大きなスピーカーを通して空間を満たしている。一号店と同じく、音楽はこのお店に欠かせない。そして音楽と同じように空間を満たすのは、スモーキーな香り。「RUTUBO」の代名詞といえば、香り豊かな燻製が真っ先に挙がる。代表の小坂田さんにそのこだわりを伺う。

小坂田「『RUTUBO』の燻製は、お酒に合うように香りを強く、スモーキーにしています。とはいえ、燻製にはクセがあまり強くない桜チップを使っているので、間口の広い、食べやすい仕上がりにしています」

メニューは黒板に書かれ、どんな燻製製品があるかはその日のお楽しみ、というわけだが、この日は、チーズ、枝豆、ミックスナッツ、変わったところでは砂肝や梅干しも。パウチになった真空状態で、店内の冷蔵庫でテイクアウト用に販売されているものもある。

小坂田「あと、ぜひ試してほしいのがマヨネーズや醤油、塩を燻製した調味料。これには僕らも大きな可能性を感じてます」

試食させてもらうと、たしかに料理の幅が広がるような気がした。というのも、例えばきゅうりなど水分が豊富な食材は燻製しづらいのだが、この調味料を使えば、どんな食材でも燻製したかのような味わいを楽しめる。こんな調味料まで燻製できるなんて、燻製ってなかなか奥が深い。

小坂田「燻製の適正温度や時間は、気温や湿度次第なので季節によって大きく変わります。いや、細かいことを言えば日でも変わるんです。ウチは、どんな食材を何度で何時間燻製するか、つまりどれくらい燻製を浸透させるかというデータをこれまでずっと残してきています」

まさに「RUTUBO」は、燻製のプロと言えるだろう。けれど「RUTUBO 第二燻製工場」は燻製がウリながらも、魅力はそれだけで終わらない。店先に立つ小坂田さんとの小気味いい掛け合い、クラフトジンや日本酒、ワインやビールなどの幅広いお酒、そして小坂田さんが独学で学んだという料理の業を施したメニューの数々。

この日はオープンと同時に、ひっきりなしにお客さんが訪れる。「RUTUBO」という名前は、お客さんや料理の“るつぼ”になればいいと名付けたのだとか。実際に周りを見回すと、性別や国籍もバラバラのお客さんが楽しそうに一杯やっていた。お互いにスペースを譲り合いながら、できる限り多くのお客さんがこのコの字のカウンターに立てるように配慮し合うような……、そんな気持ちいい雰囲気をこのお店に感じた。

「RUTUBO」のブースに並ぶもの。

「YES GOOD MARKET」では、しっかりと香り付けされた「RUTUBO」の燻製をぜひ試してほしい。

小坂田「パウチした燻製をたくさん持っていきます。お酒との相性抜群なので、ぜひお酒と燻製を一緒に楽しんでほしいですね。お酒を飲まれない方は、ぜひ燻製した調味料を試してほしいです。実は、『YES GOOD MARKET』に間に合うように、燻製したミックススパイスも開発中なので、楽しみにしていてください」

他にもここではまだ書けない開発中のものもあるという。燻製を施すだけで、食材の印象は大きく変わる。どんなものを燻製するのか……、その対象に制限をかけなければ、燻製の可能性はもっと大きく広がりそうだ。

小坂田「お客さんにも企業さんにも、うちの燻製製品をぜひ広めたいですね。今は、取り扱いしていただいているお店が京都市内だけなんですが、イベントに出店される東京の方々ともつながることで、京都以外にも増えていくといいなと思います」

RUTUBO第二燻製工場
住所:京都市下京区黒門通四条下ル下り松町168-1
電話:075-406-0023
営業:16:00〜midnight
定休日:不定休
Instagram:@rutubo_factory2

Photo:Shinsaku Yasujima
Text:Shinri Kobayashi
Edit:Jun Nakada