修行したのはミシュランラーメン店。沖縄そばのイメージを刷新する「そばんちゅ」。

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「そばんちゅ」は四条通りから少し入った、京都河原町駅からほど近いところにある。フルーツサワーが大人気だった「sour」の跡地、と聞けばなんとなくわかる方もいるかもしれない。そこで出会ったのは、気さくで朗らかな店主・杉山さんが作り出す、“進化する”沖縄そばだった。

完成するのは沖縄そば。だけど手法がちがう。

お酒も飲める沖縄そば専門店「そばんちゅ」は、京都市内にある沖縄系居酒屋「PEPPER」の二号店という位置付けになる。「そばんちゅ」も「PEPPER」も店主は、今回取材に応えてくれた杉山さんなのだが、「PEPPER」の沖縄そばが大人気だったので二号店としてこのお店ができた、というわけではないようだ。

杉山「沖縄そばには、“沖縄そばの素”のようなものがあるんです。『PEPPER』ではそれを使って、締めの一杯くらいの感じで提供していました。もちろんちゃんとつくってましたが、こだわりがあるようなものではなかったんです。数年前のコロナ禍では『PEPPER』の深夜営業ができなくて、とにかく暇なので、じゃあ沖縄そばをイチから自分でつくってみようと試してみたら、全然うまくいかなくて……」

そんなときに助け舟を出してくれたのが、懇意にしていたラーメン屋。しかもそのお店がミシュランでビブグルマンを獲った「麺処 虵の目屋」というのだから、おもしろい。

杉山「店主に相談してみたら、ありがたいことに『ウチに働きに来たら?』と。朝から夕方までそこで修行がてら働いて、夜は自分のお店『PEPPER』で働くという生活を一年くらい続けました。師匠(『麺処 虵の目屋』店主)の素材やつくり方への徹底したこだわりを見て、一工程ずつ丁寧にこだわる料理の奥深さに目覚めました」

そんな研究を重ねて誕生したのが、沖縄そばのボソボソした麺、あっさりと澄んだスープというイメージを裏切るような、新しい“沖縄そば”。

杉山「具材は沖縄そばとほぼ同じ。でも、ラーメンの手法を使って、沖縄そばを作るんです。通常の沖縄そばの出汁はスッキリ薄味ですが、ウチは豚から10時間ほど煮て出汁をとり、昆布やかつお節を加えて、味を重ねていきます。師匠にならって、化学調味料は使わずに、かえし(タレ)や香味油を使っています。麺に関しては、素材が一緒だから、定義上は沖縄そばとラーメンの麺は一緒ということになる。ということで製麺所から、喜多方ラーメンによく似たモチモチのクラシックな麺を、沖縄そば風にアレンジしてもらって仕入れてます」

こだわりのスープと麺。その上にラーメンへのリスペクトを込めたというナルトがちょこんと乗って、“飲みの締め”ではなく、これ一皿で満足できる絶品沖縄そばの完成だ。

そばんちゅのブースに並ぶもの。

さて、「YES GOOD MARKET」ではどんなメニューで勝負をかけるのか?

杉山「これだけ沖縄そばの話をしてきたのになんなんですが(笑)、ウチには『沖縄そば屋の中華そば』という人気のメニューがあるんです。麺も沖縄そばとは変えて、細麺を使っています。あとは、沖縄そばバージョンの『まぜそば』を持っていこうかなと。スープがないから、まだまだ暑い9月上旬にもぴったりだし、食べやすいでしょう」

取材班も実食させてもらった。『沖縄そば屋の中華そば』はコクがあるスープと細麺が絡み合い、背脂がきいているのに決してくどくない。『まぜそば』は、太麺で食べ応えがある。「YES GOOD MARKET」でこの2つのメニューを食べたお客さんが、どんな顔をするのかいまから楽しみだ。

杉山「『そばんちゅ』は場所柄なのか、昼飲みするお客さんも観光客も家族づれも、いわゆる老若男女だれでもいらしてくれます。同じように『YES GOOD MARKET』も多彩なお客さんがいらっしゃると思うので、一般的な“沖縄そば”とは違う、『そばんちゅ』の沖縄そばをぜひ体験してもらいたいです」

そばんちゅ
住所:京都府京都市中京区裏寺町607-19ヴァントワビル1F
営業:昼の部 11:30〜16:00 夜の部 18:00〜22:00
Instagram:@sobanchu_kyoto

Photo:Shinsaku Yasujima
Text:Shiniri Kobayashi
Edit:Jun Nakada